サルの投げた柿はカニのお腹に当たりました。
そして、グシャっという音がしてカニのお腹は割れてしまいました。
口から泡を吹きながらカニが倒れるのを見て、サルは木から飛び降りて逃げ出しました。
その時です。
柿をぶつけられて割れてしまったカニのお腹から子蟹が出てきました。
何てかわいそうなんでしょう。
せっかくお腹から出てきたのに、お母さんはもう息を引き取っていたのです。
子蟹は泣き叫びました。
「わーんわーん」
そこへ山のクリがやってきました
クリ「こりゃひどーい。びっクリした。一体何があったんだクリ。教えてクリよ」
子蟹「(激しく泣きながら)おかあさんが死んじゃったー(というようなことを言っているらしいが何を言っているのかよくわからない)」
クリ「何を言っているのかまるでわからないクリよ。泣くか話すかどっちかにしてクリ」
子蟹「わーんわーん」
クリ「泣くほうに専念するクリか!・・・泣いてばかりいては前には進めないクリよ。さあ、何があったか話してみるクリよ」
子蟹「おかあさんが死んじゃった~」
クリ「うん、それは見ればわかるクリよ。どうしてこうなったのか話してほしいクリ」
子蟹「わかんないよっ!だって僕はおかあさんのお腹の中にいたんだよ。バン、バン、グシャって音がしたと思ったら外が見えたから出てきたんだ」
クリ「バン、バンというのは柿の実がぶつかった音だクリ。ここに青い柿が2つ落ちているからね」
子蟹「くそう、柿めー。よくも僕のおかあさんを・・・」
クリ「落ち着クリ!柿は自分からぶつかってきたりしないクリよ。誰かが柿を投げつけたクリよ。お腹から出たあと誰かの姿を見なかったかい?そいつが犯人クリ」
子蟹「僕が見たのは・・・クリ」
クリ「わしじゃないクリ!さっきから何もうこの子ちょっとウザイクリ。クリが柿を投げるなんて無理クリよ。大きさ的に。わしの前に誰かの姿を見なかったクリか?」
子蟹「そういえば何か茶色いヤツが逃げていった。お尻が赤いヤツだったよ!」
クリ「それはサルだクリ。あいつは悪さをクリ返しているクリ。この間もわしの自転車のサドルだけ盗んでいったクリよ。自転車盗むんならわかるけど、サドルだけって意味わかんないクリよ。仕方がないから立ちこぎして乗ってたら、交差点で止まったときにちょっと油断してサドルがないのに座っちゃって、むき出しのパイプがお尻に刺さって、はうっ!ってなったクリよ。もうお尻が大変なことになったクリよ。思い出してもはらわたが煮えクリ返るクリ。懲らしめなくてはいけないクリ!・・・・・・とはいえクリがサルを懲らしめるのは物理的に難しいクリ・・・」
子蟹「あのー、すいません。さっきから気になってるんですけど。何で語尾に『クリ』ってつけるんですか?」
ハチ「それは、クリだからよブンブン。きょうはみんないろんな役をやるから、しゃべっている言葉で今何の役を演じているのか、お客さんにわかって貰うようにしているのよブンブン」
子蟹「なるほどー。じゃあ、ブンブン言っているあなたは・・・・暴走族ですねっ!」
ハチ「(首を横に振り)ブンブンブン!誰が暴走族なもんですか!失礼な!ブンブンといったら、ハチに決まってるじゃないっ!」
クリ「まあまあ。この子蟹はちょっといらっとするところがあるけど、悪気はないクリよ。おかあさんをサルに殺されたかわいそうな子なんだクリ。この子のためにサルのヤツを懲らしめてやりたいと思ったんじゃが、わし一人ではどうにもならないクリ。ハチさんにも力を貸してほしいクリ。どうか一緒にサルを懲らしめてほしいクリ。この通りクリ」
子蟹「僕からもお願いします」
クリ「僕からもお願いしますじゃないクリ!そもそもお前のためにお願いしてるクリよ!もうっ!」
ハチ「わかったわ。二人とも顔を上げて。実は私もサルにはかなり頭にきてたのよ」
カニ「どんなひどいことをされたんですか?」
ハチ「私たちが集めたハチミツに外国産のハチミツを混ぜたのよ。おかげで純国産として売り出すことが出来なくなってしまったの」
クリ「サルめー、また意味のわからない嫌がらせを・・・・」
ハチ「よーし、そういうことなら仲間は多いほうがいいわよね。私が見つけてきてあげる、ブーン」
クリ「おおっ!あっという間に飛んでいってしまったクリ。・・・ハチさんが加わったことで物語の展開がぐっと速くなったクリ!」
つづく