二日目の朝。
そろそろ出発しようかという時間になって岸本が携帯電話がないと騒ぎ出し、マッキーに絡み始めた。
「俺の携帯は?」
「知らないよー」
「きのうマッキーのバッグに入れておいて貰ったよね?」
「寝る前に渡したじゃん!」
「俺、そんな記憶ないもん」
記憶があやふやになるまで飲んだ自分が悪いのにマッキーを責める岸本。
意外と亭主関白みたいだ。
携帯は見つからないが、フェリーを予約してあるのでもう出なくてはいけない。
車の運転は山崎、ナビゲーションはお父さんからフェリー乗り場への行き方をしっかりレクチャーされたはずのマッキーだったが、マッキーはとても道案内がヘタなのだった。
「そこ曲がって!」の「そこ」が山崎に伝わらず一つ手前で右折してしまう。
グルーっと回ってやっと元の道に戻ったと思ったと思ったら、今度は「今の所曲がって!」などという無茶なタイミングで指示を出したので、曲がるべき所を通り過ぎてしまう。
フェリーの予約はマッキーのお父さんがしてくれていたので、我々は誰もフェリー乗り場の電話番号どころか名前すら知らず、カーナビに何と入力したらいいのかもわからない。
本当にたどり着けるのか?という不安を抱えたままとりあえず南下し続けたが、よくわからない細い道に出てしまったところで、マッキーが車から降りて地元の人に聞き込み調査を始めた。
マッキーはそういうことが得意だ。
人見知りを全くしないのだ。
初めて会う人にもいきなりフレンドリーに接触できる。
私も初めてマッキーに話しかけられたときは驚いた。
会社の近くのコンビニでいきなり「まだ仕事?」と訊かれたのだ。
マッキーは私のことを以前から知っていたらしいが、私は彼女のことを全く知らなかったにも関らず、「岸本の嫁です」という自己紹介もないまま、「きょうは何の仕事?」などという会話が続けられたので「あれっ?今俺、もしかしてナンパされてるのか!?」とそれはもうドキドキさせられたものである。
そんなマッキーが地元の人からフェリー乗り場への行き方を聞きだしてくれたおかげで、我々は無事フェリー乗り場にたどり着くことができた。
っていうか、そもそもマッキーのせいで迷ったんだけどねっ!
フェリーに乗り込んで一安心したところで、岸本が再び携帯電話の行方を気にし始め、マッキーに絡む。
「ちょっとー、どうなってんの?俺の携帯!」
「知らないって!」
「お母さんに電話して探すように言って!」
「何で私がそんなこと!自分で頼みなさいよ」
「だって今俺携帯持ってないんだから、電話かけられないじゃん!」
結婚したことないからよくわかんないけど、こんなに奥さんに甘えてもいいものなのだろうか?
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