誕生日に生命保険会社の人から手紙が届いた。

手紙には私の「誕生花」に関する薀蓄が書かれていた。一年３６５日、それぞれの日に「誕生花」というものが決められているらしい。

私の加入している生命保険会社の人は大変営業熱心な方で、毎年誕生日にはメッセージカードなどを送って下さる。「お誕生日おめでとうございます」だけではマンネリになってしまうと、新たなサービスとして誕生花を取り上げたのだと思われるが、果たしてこれは本当にサービスのつもりなのだろうか？手紙を読んで疑問を感じざるを得なかった。

「相澤さんの誕生日、二月二日の誕生花は「ボケ」。花言葉は「平凡」。江戸時代からお祝い事にはいけてはならない花とされている」

ハリウッド映画のプレミア試写会。ドレスアップしたセレブリティたちが赤いカーペットの上を歩いて映画館に入っていく姿（カーペットウォークというらしい）をテレビなどで見たことがある方も多いだろう。

そんなプレミア試写会が先日名古屋でも行われた。映画「蒼き狼」のキャンペーンイベントである。映画にちなんでカーペットの色も赤ではなく青。名古屋のセレブとして在名民放各局のアナウンサーもカーペットの上を歩くことになり、テレビ愛知からは私と清水アナに出演要請があった。

「男性はタキシードを着て来て下さい」とのお達しだったので、紳士服の〇〇に買いに行った。セレブは量販店なんかには行かないよなーと思いつつ。

当日、小心者の私たちは４０分も前に現場に到着してしまった。アナウンサーたちだけでなく、反町隆史さんなど映画の出演者の皆さんもカーペットウォークをされることになっていたので、すでに周りにはたくさんの人だかりが出来ていた。

セレブは４０分も前に到着しないということで、控え室も用意されていなかった。タキシードとドレス姿の私たちは「何かしら？この人たち」という軽い注目を集めつつ、コーヒーショップで時間を潰した。

頃合を見計らって会場に戻ると、ファッションモデルの皆さんがいらっしゃった。これぞ本物のセレブという感じがした。あんなにスタイルのいい方たちがドレスアップするとものすごいオーラが出る。そのオーラにやられて思わず『結婚してください』と口走りそうになった。

他局のアナウンサーも続々登場してきた。中にはセレブ感たっぷりに黒いリムジンで乗り付けたアナウンサーもいらっしゃった。

私も一応セレブ感を醸し出すための小道具は用意していた。花粉症の私が普段愛用しているティシュー、「鼻セレブ」である。この箱を脇にかかえて鼻をかみながら歩くというのはどうだろうと考えていたのだが、映画関係者の方に怒られるかもしれないので結局やめたのだった。

私たちが歩く番がきた。サッサと早足で歩いていく。私は普段かな りの早足で歩く。その方がカロリーを消費して体にいいからだ。全くカロリー消費とか気にするべきではないこの場面でもそんな歩き方をしてしまった。

カーペットの先にはステージがあった。マイクを持ったＭＣの方が誰が歩いているかを紹介する。

「続いて歩いてらっしゃるのは、モデルの皆さんでーす」

ええーっ！どう見てもモデルじゃないよねー、僕ら！あまりの ことに何かもうどうしていいかわからなくなって思わずツーステップを踏んでしまった。モデルの皆さんは私たちのあとに歩くことになっていたのだけれど、どうもあまり連絡がうまくいかなかったようだ。紹介の順番はどんどんずれていき、他局の男性アナウンサーなどは「薬師寺保栄さんです」と紹介されていた。

そのままステージに上がってもＭＣの人は私たちが誰なのかわからなかったらしく「それでは自己紹介をお願いします」とマイクを向けられた。セレブは絶対自己紹介なんかしないよなーというひねた心で「テレビ愛知の相澤でゲス」とセレブ感台無しな自己紹介でもしてやろうかとも一瞬思ったけれど、普通に自己紹介してステージを降りた。

「鉄鋼マンが錆付いてどうすんだ！」

「華麗なる一族」の最終回で主人公、万俵鉄平が、失意のどん底にある阪神特殊製鋼の社員たちに向かって言ったセリフである。

「鉄鋼マンが錆付いて」・・・・なんてうまいことを言うんだろう。心底感心すると同時に、私も言ってみたーいという欲望が激しく湧き上がったのだが、残念ながら私は鉄鋼マンではないのだった。

・・・いや、待てよ。そういえば鉄鋼マンの友人が一人いるじゃないか！アイツが仕事でミスなんかして落ち込んだ時に言ってやればいいんだ！・・・・・・早くなんか失敗しないかな・・・・。

あとは醤油メーカーのヤツもいたな。あいつには使えないだろうか？

「キッコーマンが錆付いてどうすんだ！」

・・・本当にどうすんだろう。

私にはもう一つ、憧れのセリフがある。１６年前に知り合いの女の子から聞いたセリフだ。その女の子が前の彼氏とよりを戻すことになって、そのときに付き合っていた彼氏に別れたいと言ったら、こう言われたそうだ。

「後で振り返った時にきょうのキミの選択が正しかったって言えるといいね」

アレ？文字にするとなんか嫌味っぽいな。でもこの話を聞いたときは「うおー、めちゃめちゃカッコええ！」と思ったものである。そして「もし自分が振られることがあったら、絶対言ってやるもんね」と固く心に誓ったのだった。

だが、数年後、実際にそんなシチュエーションになった時に私が口走ったセリフは・・・・・「絶対後悔するぞ！」だった。

来週、夕方のニュースの中で生中継のリポートをすることになった。東山動物園からの中継である。

私は動物好きである。先日も三重県の鳥羽水族館に一人で行ってきた。その晩、会社の人々と飲み会があったのだが、その席で「マナティって、ホントでっかいんだよ！」とかなり興奮した口調で連呼してしまい、「言ってることが子供だ・・・」と我ながら恥ずかしくなった。

そんな私であるからして、動物園からの中継は非常に楽しみである。最近東山動物園では動物たちと直に触れ合える機会をたくさん作っているらしい。私も哺乳類同士ならではの温もりの交換を楽しんでくるつもりだ。

ただ、ちょっとだけ頭を悩ませていることがある。ニュースの場合、スタジオ出演のキャスターたちの衣装はスタイリストさんが用意してくれるのだが、外周りのリポーターの衣装は自前なのである。私のワードローブはジャケット類ばかりで、どうも動物との触れ合いにはふさわしくない気がする。
もうちょっと寒かったら、あるいはもうちょっと暖かかったら、また別の選択肢もあったのだが、見事にエアーポケットにはまった格好だ。

思い切って買うか、動物と触れ合うのにふさわしい服を。
どんな服がいいのか？
アニマルプリント？
触れ合うのは主に草食動物だから、ヒョウ柄とか着ていったら動物たちは逃げ惑ったりするんだろうか？それも映像的には面白いかもしれないが、自前でヒョウ柄の服を買うのはキツイ。

とりあえず、カジュアルな洋服屋さんが並ぶ大須の街を覗いてみることにした。
どの店も春休みの学生たちで賑わっていた。みんなお洒落だ。ファッションを楽しんでいる。人間は草食動物ならぬ、装飾動物なのだなあと思っていたら、向こうの方から奇妙な装飾動物が歩いてくるのを発見した。
着ぐるみを着た女子高生だった。キティちゃんの着ぐるみパジャマだ。
そういえば大須にはそんな着ぐるみパジャマを扱っている店もあったっけ。
いっそ動物の着ぐるみはどうだろう？
でも自前で着ぐるみパジャマを買うのもキツイよなー・・・・。
結局何も買わずに帰ったのだった。

哺乳類と触れ合うつもりでいたのに、ハ虫類と触れ合うはめになりました。
ニシキヘビです。２０ｋｇもあります。ヘビー級です。
冷たくてヌメヌメしているのかと思いきや、意外にもほんのり温かく乾いていました。

動物と触れ合うにはやはりアースカラーの穏やかな色がふさわしいだろうと思い、新しく服を買いました。
値札を見ずに買ったら、結構高かったです。
ディレクターには「古着ですか？」と言われましたけど。

東山動物園といえばコアラですが、樹上で眠っていてちっとも動かないコアラを見ていた子供が「死んどる」と言ったのがおかしかったです。

高校の生物観察用の池に住んでいたウシガエルを思い出しました。ちっとも動かないので「死んでんじゃねーの」と、よく木の枝でつついたりする生徒がいたもんです。
でもその現場を生物の先生に見つかると大変です。
「カエルと同じ気持ちを味わってもらう」と竹刀でつつかれるんです。

ちなみにその先生の仇名はカエルでした。

またまたグループ絆の話である。我々の存在はだいぶ世間の皆様にも知られてきたみたいだ。世間といっても主に社内だけど。先日も会社の先輩に声をかけられた。
「また一緒に遊んでんの？あの、何とかっていうグループで・・・」
「絆ですっ！」
「そうそう契りね」
・・・・何で絆って言ってるそばから契りになってしまうのだろうか。本当に人の話を聞かない人というのはいるもんだ。私たちは絆だ。決して契ったりしない。一部の人からは「不毛なグループ交際集団」などと揶揄されたりする平均年齢３３歳の仲良しグループだ。

メンバーの一人、編成部・山川（♀）が先月、誕生日を迎えた。当日の夜、ディズニー好きの山川のために我々はディズニーキャラクターに扮装して山川邸に突入した。そしてびっくりしている山川の周りをグルグルとパレードし、ディズニーランドのパスポートをプレゼントしたのだった。

コスチュームは一着あたり一万５千円。それが７人分だから、そのお金を集めてプレゼント代にあてていたら相当いいものが買えたはずだが、モノより思い出。プライスレスだ。
それに女性たちはシンデレラや白雪姫、眠れる森の美女に扮してかなりご満悦の様子であり、山川の誕生日にかこつけて自分たちの願望を叶えたようなところもあった。
ディズニーランドには山川だけでなくみんな一緒に行くことになっていたのだが、この扮装で乗り込もう！と悪ノリする輩も現れた。いや、むしろみんなそのつもりになっていたと言っていい。ただ一人を除いては。

その一人とは他でもない私である。私だけは今回のコスプレをエンジョイしきれずにいたのだ。
読者の皆さんはこの格好が何だかわかるだろうか？

グーフィーなんだよ！これでも。
もう一人の男性メンバー、山崎が着用したドナルド･ダックのコスチュームは、かなりうまく出来ていた。おしりの大きいアヒル体型をちゃんと表現しており、帽子のつばもクチバシになっていて、その上にあの縦長の大きな目もついているのに、私のグーフィーは黄緑色の食パンみたいな帽子の両脇に耳がダランと垂れているだけで、あの特徴的な目や口はまるで表現されていないのだ。
さすがにこれでは何だかわからないだろうと製作者も判断したのだろう、帽子の正面には大きく「ＧＯＯＦＹ」という刺繍が施されており、それを見てやっと「ああ、じゃあグーフィーなんだね」とわかるという非常にレベルの低い出来なのだった。

山川邸への突入の時だって、最初は私が先頭でスタンバイしていたのだが、こんな扮装の男が先頭だと何のパレードだかわからなくなってしまう恐れがあると他の人に代わってもらったのだった。案の定山川にはパレードが終わっても「何かディズニーのキャラクターらしい」という程度しかご理解頂けなかったのである。

インターネットで注文する前に写真でチェックしなかった自分のずぼらさを呪うばかりだ。あーあ、ドラえもんがいたらなあ・・・・。

つづく