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2006年03月22日

チーム・さびしんぼう 北陸ツアー その1

「春はお別れの季節です みんな旅立って行くんです」と、いにしえの人も歌ったように、この春も大きな別れが待っていた。スポーツ部山根が、ガラスの都会、東京へ旅立つことになったのである。

山根と私、そして広報部の大久保は、去年の11月、チーム・さびしんぼうとして尾道を旅した仲である。(詳しくは12月のブログを読んでくださいな)そのチーム・さびしんぼうもこれで解散である。最後の思い出作りの旅に出ることになった。行き先は山根の「カニ食いたいっす」の一言で北陸に決定した。

仕事が終わった土曜の夜9時、名古屋を出発、金沢へ向かう。金沢の夜はとても賑やかだ。真夜中に繰り出してもおいしい海の幸が堪能できる居酒屋が何軒もあるのだ。

※おニャン子クラブ「じゃあね」より

チーム・さびしんぼう 北陸ツアー その2

金沢に到着し、早速一軒の居酒屋の暖簾をくぐる。テーブルに並ぶ海の幸。さすがに日本海の荒波にもまれてきた魚たちだ。身がひきしまっている。恐るべき日本海のひきしめ効果よ!一方、食べている私たちの顔は緩み、全身から力が抜けていく。地酒もすすみ、山根がみるみる赤くなっていく「君は何?シャア専用?」と訊きたくなるほどの赤さだ。

リラックスしまくりの私と山根だったが、向かいに座っていた大久保だけは、何となく身構えている様子だった。大久保は前回の旅で名物のワッフルを口にした際、不用意に「まいうー」と口にしてしまい、「お前のリポートからは何も伝わってこねーんだよ!」と山根から激しくダメ出しされた。別にリポーターじゃないのに。しかもその様子は、私の手でおもしろおかしくブログ上で発表されてしまっていた。今回はその二の舞を何としても避けたいらしい。慎重に言葉を選び選びコメントしていく。

「刺身はどれも身が締まってますよね。それでいながら脂がのってるんですよねー。この白ガスエビは初めて食べましたけど、甘味がありますね。歯ごたえのしっかりした甘エビという感じですね。ホタルイカの一夜干しは、内側の内臓がまだ生っぽくて、その味が後をひきますねー」

その努力は買ってやりたい。しかし・・・・・

「お前のリポートからはちっともおいしさが伝わってこねーんだよっ!」

案の定、山根のダメ出しが待っていた。

「表情がちっともおいしそうじゃねーんだよ!!」

そうなのだ。コメントを考えることに一生懸命になりすぎて表情がまるで硬くなってしまっていたのだ。下手なリポーターが陥ってしまいがちな失敗である。

「大久保はまだまだスキルアップが必要だ」と語る山根。自分が東京へ行ってしまう前に、何かを残しておきたいという気持ちなのだろうか?・・・・といっても、広報部員である大久保にテレビカメラの前でリポートをする機会はどう考えてもないんだけれども。

ちなみに私がテレビを見ていて、今までで一番おいしそうだなーと思ったリポートは、リポーターが口に入れた瞬間に「こ、これは・・・・」と絶句して後ろにのけぞるというものである。グルメリポートにはやはりコメント以上に表情が大切なのだ。

そして、そのリポーターが何を食べていたかというと・・・・・我々が明日の夜食べる「越前かに」なのだった。

つづく

2006年03月25日

チーム・さびしんぼう 北陸ツアー その3

      Photo_33     翌朝、まず金沢城を訪ねた。

金沢城の新しいシンボルとなっているのが、2001年に完成した五十間長屋だ。城壁と倉庫を兼ねた2層2階の建物が、伝統的な工法を使って復元されている。中に入ると柱と梁と桁が複雑に組み合わされているのが見られる。

Kif_0783_2  「いやー、いい柱だー」

 感動のあまり、渡辺篤史さんと化してしまう我々だったが、「いやー、いい吹き抜けだー、ご主人!」と、いもしないご主人や「おやおやおや、ワンちゃんだー」と、いもしないワンちゃんを登場させたところで限界を感じ、城を出た。そのまま隣接する兼六園に向かう。

3月もまもなくKif_0784下旬になろうとしているのに、雪が降っていた。兼六園の木々にも「雪つり」が施されたままだった。

「つってるねー」

見たまんまの感想を口にするだけの我々。今ひとつ観光に集中しきっていない。しかし、それもまあ仕方のないことだった。何しろプレイボールが迫っていたのだから。

つづく

チーム・さびしんぼう 北陸ツアー その4

Kif_0835 車に乗り込み、テレビをつけると、すでにWBC日韓戦が始まっていた。スポーツ部山根が野球好きなのはもちろんだが、、広報部の大久保も東京ドームまでWBCのアジア予選を観に行くほどの野球好きである。観光そっちのけでみんなで王ジャパンを応援することになった。

いい試合だった。特に名古屋在住の我々は、ドラゴンズの福留選手が代打で登場し、見事に先制ツーランを放ったシーンに熱くなった。やはりみんなで見るとエキサイトしますな。といいつつ、私は8回に多村選手が6点目のソロホームランを叩きだしたとこまで見て眠ってしまった。いや、もう日本が勝つのは間違いないと思ったんで・・・・。

目を覚ますと二人がゴルフ中継を見ていた。関東や関西では最後まで日韓戦を中継したらしいが、中部地方では途中からゴルフ中継に切り替わっていたのだ。

「ねーねー、ゴルフになってんのに何でまだ見てんの?」

「日韓戦が終わった瞬間に野球中継に切り替わるかもしれないじゃないですか」

「そうしたら王監督のインタビューなんかも見られるかもしれないし・・・・」

すごい熱意。正直私にはそこまでの熱意はなかった。申し訳ないけれども、ここは多数決よりも先輩の権限を優先させてもらう。次の目的地に向かって出発だ。

とはいえ、どこへ行くか決めていなかった。運転も行き先も大久保に任せていたら、石川県小松市にある、松井秀喜ベースボーKif_0785ルミュージアムに着いた。びっくりした。一体どれだけ野球好きなのか!

松井秀喜ベースボールミュージアムで、とくに大久保の心を捉えたのは松井選手が使用した歴代のバットが展示されているコーナーだった。

ジャイアンツ時代、松井選手のバットのスィートスポットはだんだん小さくなり、グリップも細くなっていった。その方がコントロールするのは難しいけれども、しっかりとらえれば飛距離が出るのだ。

ところが、松井選手はメジャーに行ってまたスィートスポットが大きく、グリップの太いバットに戻している。向こうのピッチャーは手元で微妙に変化するボールの使い手が多い。扱いやすいバットで、まずミートを心掛けようということらしい。

大久保の目はキラキラと輝いていたが、私は寝起きということもあって、そこまでテンションが上がらなかった。

「バットがたくさん並んでるねー」

兼六園の時と同様、見たまんまの感想を口にしただけだった。何だか立松和平さんのリポートの入り方みたいなコメントだ。Kif_0802

この日の宿は福井県の越前海岸に取っていたので、宿へ向かうついでに東尋坊へ足を伸ばす。

叩きつける日本海の荒波。ダイナミックな景観。しかし、何か足りない。

東尋坊といえば、火曜サスペンス劇場のクライマックスによく登場する場所だ。我々もそのイメージを持って、ここに足を運んでいた。そうだ、足りないのは英一郎だ。是非、岬の突端にKif_0787 船越英一郎さんの銅像を立ておいてほしいものである。

つづく

2006年03月27日

チーム・さびしんぼう 北陸ツアー その5

Kif_0833 「かに食いたいっす」

山根の一言で始まった今回の旅。いよいよ越前海岸の料理旅館でカニのフルコースが始まった。かなりのお値段であったが、今回は山根のお別れツアーなので、「山根のカニ代は俺が持つ!」と宣言していた私。山根に「高いんだから、しっかり味わって食べるように。身をチューチュー吸いすぎて口から血 が出るくらい、カニに血の味が混じるくらいまで味わい尽くすように」と厳命した。奢るときもせこさを漂わす私だ。

高級ブランド蟹の証、黄色いタグがついた大きな越前かにたちがどどーんとテーブルの上を占拠する、まさにカニのカーニバル。思わす韻を踏んでしまうほどのカニ尽くしだ。刺身や鍋も合わせると、一人あたり3匹くらいカニを食すことになりそうだ。Kif_0822

「こ、これは・・・・」

口に入れたらやっぱり絶句。♪おいしくって~おいしくって~言葉に出来な~い。「今、俺確実に親よりうまいもの食ってんなー」と、申し訳なさまで覚える。37年間生きてきたが、そんなこと思ったの初めてだ。それぐらいうまいのだ。

仲居さんが入れ替わり立ち代り現れ、バリバリと甲羅を割ったり、脚にハサミで切れ目を入れて、カニを食べやすい状態にしてくれる。そして、その都度「おいしい?」と我々に尋ねる。相当カニが自慢のようだ。あんまり何回も聞かれるので、少々うるさくなってきたけれど、我々3人のために9匹ものカニが命を落としているのだ。念仏代わりと思って、毎回「うまいっす」と応えた。

しかし、それもだんだん難しくなってきた。量が多すぎるのだ。食べても食べても減らない。カニマラソンの様相を呈してきた。もう口からハサミが出てきそうである。結局、食べきれず、鍋は翌日の朝食に回してもらうことにした。

「さーて、腹ごなしに歌っておきますかー」

旅館の中にあKif_0820るカラオケスナックへ。他に客もおらず、3人で歌い放題である。

まず大久保が「蒼いフォトグラフ」を歌った。松田聖子さん風に歌っているのだが、語尾のビブラート以外はどうも南野陽子さんに聞こえるのがとても不思議だった。松田聖子と南野陽子って、「子」しか合ってないじゃん!っていうか共通点何もないじゃん。

続いて私が「瑠璃色の地球」を歌う。宿へ来る途中の車の中で松田聖子ベストを聴いていた我々。「私の好きな松田聖子ベスト3」という緊急アンケートを実施したところ、驚くべきことに3人とも「蒼いフォトグラフ」と「瑠璃色の地球」がランクインしていたのだ。渋い選曲で一致をみたことに、我々はまた絆の深さを確認したのだった。

カラオケボックス気分で切れ目なく歌いつづけていたら、スナックのママが「一人3500円でいいわ」と言い出した。

「あなたたち、何だか私の子供みたいなんだもの」

子供だって。まさかこの年で若さがウリになるとは思わなかった。張り切って新し目の曲にシフトする我々。浴衣に丹前姿でHIPHOP。ケツメイシメドレーだ。

するとママさんは「一人3000円」まで値下げしてくれた。本当は一杯2000円もとる店らしいので、かなりのサービスだ。ママさんのお子さんに感謝しなくては。で、そのお子さんはどんな人なのかしらん?

「この間娘の誕生日で本人から電話してきたんだけど、もう40歳になったって・・・」

40かよっ!年上に見られてたのか。決して若さがウリになったのではなかったのである。

その後もママさんは曲が終わるごとに「旅館の人には内緒よ」「本当は一杯2000円なのよ」「子供みたいなんだもの」を繰り返した。さきほど仲居さんたちに「おいしい?」と繰り返し聞かれたこともあって、「福井県の人はいい人だけど、ちょっとしつこい」という印象を持ってしまった。

しつこいといえば、我々の歌も然りだ。カラオケスナックであれだけ歌ったのに、引き続き大浴場でも他に誰もいないのをいいことに大声で中村雅俊メドレーを始める私と山根。「俺たちの旅」「心の色」「恋人も濡れる街角」。カラオケスナックなんかよりずっと声が響いて気持ちがいい。ただカラオケと違って歌詞が出ないので、「恋人も濡れる街角」を歌っていても、何度も♪触るだけで感じちゃう~という歌詞が出てきた。本当は一回しか出てこないはずなのに。それでもフルコーラス歌いきった。酔っ払いの言い草そのものだが、今となっては「どうやってたどり着いたのか、まるで憶えていない」

一方、大久保は、女湯でスナックのママさんと一緒になっていた。ママさんは店をしめて家に帰る前に、いつも風呂に入っていくらしい。そして風呂の中でも引き続き「本当は一杯2000円なのよ」というフレーズを繰り返したそうだ。

翌朝、朝食を食べに宴会場へ行って驚いた。昨晩残した鍋だけ食べればいいと思っていたのに、通常の朝食も並んでいたのである。通常の朝食と言っても、味噌汁にはどどーんとカニが入っていたりして、ボリューム感たっぷりなのだ。昨晩の食べ過ぎでちっともおなかが減ってないのに、この量。そしてまた繰り返される仲居さんたちの「おいしい?」攻撃。確かにうまいよっ!うまいから残せないんだよっ!どう考えたって多すぎるだろ!という気持ちは口に出さず、昨晩同様「うまいっす」と応えていたら、仲居さんから信じられない言葉をかけられた。

「あんたも好きねー」

ええーっ!加トちゃんー!?・・・・・こっちがこんなに苦しい思いをして無理矢理詰め込んでいるというのに、「あんたも好きねー」って欲望丸出しみたいな扱いしやがってー。戦意喪失。一気にペースダウンだ。鍋の中の雑炊はもう残してしまおう。すると今度は雑炊を作ってくれた仲居さんが言う。

「私の作った雑炊、まずかった?」

うわ~ん、もうっ!めんどくせええーっ。食べますよ~。・・・・・何かもうカニリンチみたいだ。確かにうまいカニだったと思うが、あのカニの味を思い出そうとすると、先におなかの苦しさが蘇ってきてしまう。本当に当分カニは遠慮したい。

宿代は私の予想をかなり上回っていた。十分な予算を財布に入れてきたつもりだったが、とても山根の分まで払いきれない。結局大久保にも出して貰った。それでも私の財布には1050円しか残らなかった。

おしまい

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プロフィール

【最近面白かった漫画】
「三月のライオン」
「とめはねっ!」
「宇宙兄弟」
「モテキ」
「へうげもの」
「もやしもん」
「こさめちゃん」
「犬のジュース屋さん Z」

【好きな言葉】
「振り向くな、振り向くな、後ろには夢がない」(寺山修二)
「しゃかりきコロンブス」(光ゲンジ)

【担当番組】
ニュースデータで解析!サンデージャーナル、特番など

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