相澤「画についても伺いたいと思います。余白を多く残した、デッサンのような画にしたのはなぜなんでしょう?」
西村プロデューサー「日本の現行のセル・アニメーションといわれるものも
アメリカで隆盛を誇っているコンピューターグラフィックスの3Dアニメーションも
そもそも画面そのものが完成された画面なんですよ。
高畑さんはあえてスケッチっていう途中段階、未完成の画面を作ろうとしたんです。
なぜかっていうと、画面が完成されていると、
お客さんは自分で想像力を働かせることはありませんよね。
この作品は、僕らは『引き算のアニメーション』って言ってるんですけど、
いろんなものを抜いていって、シンプルにしていくことによって、
お客さんと一体化しようと試みました。
お客さんが自分の想像力を働かせて、
いろんなものを感じ取れるような画面を目指したんです」
相澤「そうした“抜いた絵”を描くのも、描き混んだ絵と同じくらい時間がかかるものなんですか?」
西村プロデューサー「時間はかからないかもしれません。ただ描ける人がいません。
絵っていうのは線を足せば足すほど、塗りこめば塗りこむほど、
上手く見えるんですよ。下手な人間が描いても。
でも、サササっって描くのは、上手い人間じゃないと描けないんです。
この『かぐや姫の物語』の現場には、多くの天才が揃ったんです。
じゃなかったら出来なかったです。
天才たちの仕事ですね、これは」
おしまい
相澤 伸郎 @ 2013年11月25日 10:25
相澤「共演した方々について特に印象に残ってることは?」
朝倉さん「やはり宮本信子さん、地井武男さんとのお芝居ですね。
収録に入る前に『本読み』があったんですけど、
そこで私のかぐや姫のイメージ像が見えたというか・・・。
宮本さんと地井さんの声から本当に愛情を感じられまして、
やっているとだんだん私ホントにこの二人に愛されてると思えてくるような。
自分が本当にかぐや姫かもしれない、
この人たちの娘かもしれないと思う瞬間が度々ありました」
相澤「朝倉さん以外の声優さんはどうやって選ばれたんですか?」
西村プロデューサー「これは簡単でした。キャスティングを始める前に高畑さんに
『何を基準に選んだらいいんだ?』って訊かれたんですね。
『高畑さん、これ最後ですから、好きな人にしましょうよ。
高畑さんが会いたい人を選んで下さい』って言ったんです。
出演者みんな高畑さんが会いたい人なんです」
相澤「だからこんなにいろんな分野の人が・・・・」
西村プロデューサー「例えば、志の輔さんなんてのは・・・・
高畑さん、志の輔さんの新作落語の大ファンですから。
そういう基準で選んでいいですよって言ったんです。
じゃなかったら決まんないですから、高畑さんは。
延々と検討しますからね」
つづく
相澤 伸郎 @ 2013年11月24日 14:57
映画「かぐや姫の物語」でかぐや姫の声を演じた朝倉あきさんと西村義明プロデューサーにインタビューしてきました。
相澤「かぐや姫の声を誰が演じるかは、オーディションで決められたそうですが、朝倉さんが選ばれた理由は?」
西村プロデューサー「『かぐや姫の物語』って映画は、
高畑監督は『真の悲劇である』と言ってるんですね。
かぐや姫が月に帰ってしまうところは変えてませんから。
その悲しみ方が大事になってくるんですよ。
悲しみ方っていろいろありますけど、朝倉あきさんの悲しみ方の中には、違う感情があるんです。
悲しいだけじゃなく、悔しいって感情があるんですよね。
悔しいって感情ってね、一生懸命生きてる人間にしか出せないんですよ。
彼女の声の中には、悲しみの中に悔しさ、
つまり、懸命に生きた一人の女性の声が乗り移ってるんですよね」
相澤「というお話を聞いて、朝倉さんは自分ではどう思われますか?」
朝倉さん「すごくビックリしましたね・・・・・・そうですね、確かにそういう部分があるかもしれません」
西村プロデューサー「あるんです!!!」
朝倉さん「ある、あります。いろいろ私も悩んだり、苦しんだりしますけど、あんまりそういうのは出したくなくて・・・・。そういう部分を見抜かれてるかと思うと・・・・今ものすっごく恥ずかしいです」
西村プロデューサー「(笑)」
朝倉さん「本当にすごく短いオーディションだったんですね。
私の中では『落ちた・・・・』と思ったくらい、あっさりしたオーディションで。
その中でそこまで見抜かれていたかと思うと、何て言うか・・・・・恐ろしいですね」
相澤「見抜けるものなんですね」
西村プロデューサー「彼女の声だけ違ったんですよ。
彼女にたどり着くまでに、高畑さんと、おおげさじゃなく数百人の声を聴いていたんですよ。
有名無名問わず。
その女性の声の多くが一つは甘えた声だったんですよね。
もう一つは芝居とか声が全部受け身だったんですよ。
かぐや姫って女性を描くときに高畑さんが大事にしていたのが、『自分の考えを持っている女性』。
そういうものを描こうとしているのに、声が受け身だったり、
男性におもねる声だったりしたらダメだろうと。
オーディションやっても全然見つからなくて、最後に彼女の声にたどり着いたときには即決でしたね。『彼女だ!』って。
彼女の声には一生懸命生きている一人の女性の意志ってのが感じられたんですよ」
つづく
相澤 伸郎 @ 2013年11月23日 17:16
☆☆☆柴田勝家役の役所広司さんと共演した感想は?
大泉さん「人を受け入れる力がすごいというか、
演技しててもホントに心地いいんですよね。
セリフをきちんと受け止めてくれるというか。
・・・・対決してるシーンなんですけどね。
何だろう、この不思議なやりやすさは?っていう・・・・。
勝家は今回すごくチャーミングな役で、
台本の中でも非常に面白いんですけど、
それをさらに役所さんは自分のお芝居の力でさらに面白くしちゃうから
そこがすごいというか・・・・。
僕なんかホントにもう三谷さんに言われることをこなすのに精一杯で、
自分から監督の演出以外で何かをする余裕ってないんですけど、
役所さんはやってくるんですよねー。
そこがやっぱりすごい。実際面白い。
☆☆☆例えばどんなシーンで?
大泉さん
「清須会議の前に佐藤浩市さん演じる池田恒興が
秀吉と勝家どちらにつくかっていうのが大きなポイントなわけですよね。
勝家も秀吉も自分の側に取り込みたいわけですよ。
で、同じ日の朝にどちらからも声がかかって、
恒興が朝飯を食わされるってシーンがあるんですよね。
まず勝家に呼ばれて、勝家とめしを食ってお腹いっぱいなのに
秀吉ともつきあわなきゃいけないって面白いシーンなんですけど、
勝家がごはんを食べて、歯茎のあたりに何かはさまってるんでしょね、
ものすごい勢いでボリボリボリボリ口の中に指を入れて掘ってるんですよ。
今回の勝家ってのはくさいし、汚いし・・・みたいな役なんで
非常に勝家らしいわけですけれども。
その掘った指で恒興の肩に手をまわして
「おいっ、味方につけ!」ってやるわけですよ。
これやられたらやだなってことをやるわけですよ。
監督がそのシーンを見て、そのあと僕のシーンを撮ったんですけど、
『大泉くん、ちょっとこれを見てごらん』って言われて、
役所さんのその芝居を見せられて、『同じことやってほしい』って言われて、
で、秀吉もガリガリガリガリ指をなめてから恒興と肩を組むっていう・・・・。
だから、役所さんのお芝居でその2つのシーンが
さらにまた面白くなっちゃったわけですよねー」
おしまい
相澤 伸郎 @ 2013年11月 1日 11:11