相澤「岡田准一さんと初めて共演された感想は?」
役所さん「岡田くん、岡田くんって、ジャニーズの人たちは「くん」って呼ばれてるけど・・・・・、何人か一緒に仕事しましたけど、彼らは子供のときからプロでやってますんで、本当にプロフェッショナルで・・・。岡田くんは、特に武道に興味を持って自分でもやってますし、時代劇がよく似合う俳優さんだなと思いました」
相澤「役所さん演じる秋谷と岡田さん演じる庄三郎の師弟愛がこの作品のテーマの一つでしたが、監督の目には役所さんと岡田さんの関係はどう映ったんでしょうか?」
小泉監督「岡田さんは、役所さんへの尊敬の念を非常に強く持ってるんですよね。役所さんがやってるときに見に来てるんですよ。キャメラの後ろの方に。どういうお芝居をされるのかなって。それが自然とお芝居の中に出てきて、それが生かせたのが一番良かったと思ってますけど」
相澤「師弟愛、そして夫婦の愛も描かれていました。原田美枝子さん演じる織江と秋谷のような夫婦をどう思いますか?」
役所さん「羨ましいですよね。立派な奥さんですよね。結局ああいう奥さんがいるからこそ、秋谷はわだかまることなく、悔いを残さず、結局晴れ晴れと最後の務めに出られたんじゃないかと思います」
相澤「最後、秋谷を送り出す前の二人のやりとりが・・・・あ、ネタばれになっちゃいますかね(笑)。ここでは詳しく話さないほうがいいですね」
小泉監督「よく黒沢さんはね、映画を撮ってるのに『ここは映画になった』っていう言い方をするんですよ。僕はラストの二人のやりとりは『ここは映画になったな』と。つまり、小説でも音楽でもなく、映画でなければ表現できない、そういうところがつかめたんじゃないかなと思ってます。自分ではね。だから、そこを観てほしいですね」
おしまい
相澤 伸郎 @ 2014年9月26日 10:27
相澤「監督はどうして『蜩の記』という小説を映画にしようと思われたんですか?」
小泉監督「200年前の侍にとってはね、切腹は日常茶飯事に近いことなんですけれども、すぐに腹を切らずに、10年の日々を過ごす人ってどういう人なのかな?そういうのを知ってみたい・・・。知りたいっていう思いが映画を作る大きな動機になるんでね。小説よりもスクリーンの中に立ち上げて、その人物に会ってみたいと。撮影の間、毎日のように秋谷に出会えたっていう喜びは大きかったですね。撮りながら、『素晴らしい人に出会えてるなあ』って思いを持って役所さんを見てたんですけど」
相澤「監督のほうから『こう演じてください』ではなく、役所さんに見せてもらっていたんですね?」
小泉監督「そうです。僕は何もしてるわけじゃないですから。ただ、演じやすい環境だけは、我々スタッフが作れるんですよ。それは感じとって頂けたかなと思うんですけど・・・」
役所さん「もちろんです。僕たちの仕事って、ないことをあるようにやること。ま、ウソをやることですからね。例えば、お芝居をしてる時にセットの中に電線とか、現代のものが目に入ってくるとどこかやっぱりこう・・・気持ちよくウソがつけないっていうんですかね。小泉監督の現場では堂々とウソをつけるような感じ、そういう場を与えてもらってる感じがすごくしました。
見事にいい準備をされてる組だなってつくづく思いましたね。衣装合わせとかカツラ合わせも監督がピンとくるまで何度も繰り返して、だんだんだんだん自分の体にしっくり収まってくる感じを味わえましたね。普通、そんなに何度も何度も衣装合わせはしないんですけど」
小泉監督「そういう風にやるもんだって教わったんですよ。僕だけじゃなく、スタッフも。一緒に黒沢さんの元で同じように育ってきた人たちなんで」
つづく
相澤 伸郎 @ 2014年9月25日 22:25
役所さん「所作っていうのは、それをやることによって自分たちの気持ちの部分で何か変わるんですよね。ま、めんどくさいんですよ、所作っていちいち。でも、そういうことに押し込んでいった動きの中で、自分の気持ちも何となくきれいな感じになるっていうか、凛とした感じになる雰囲気は自分の中に入ってきますね。不自由だけど、やっぱり昔の人は、姿、形の美しさにこだわりがあったんでしょうね」
相澤「この作品に出てくる人たちは、所作も美しいし、言葉づかいも、生き方も美しいですよね。そういう人たちを描くのは、どうしてなんですか?」
小泉監督「黒沢さんが常々『美しい映画を』っていう風に僕たちにおっしゃってたんですよね。『美しい映画を僕は撮りたいんだ』って。黒沢さんが向いている方向に僕も進みたい、どうしたって・・・。美しさというのは形であったり、心であったり、自然だったり、いろいろあると思いますけど、黒沢さんが求めている美しさは何なのか?・・・・そういうものに少しでも近づきたいなってのは大きいんですよ」
つづく
相澤 伸郎 @ 2014年9月24日 12:20
映画「蜩の記」
主演の役所広司さんと小泉堯史監督にインタビューしました。
小泉監督は黒沢明監督の愛弟子です。
相澤「10年後の切腹を命じられながらも気高い生き方を貫く『戸田秋谷』という武士を演じるにあたって、意識されたことはありますか?」
役所さん「平常心で、静かな呼吸を常にしてる人だろうなと。とてもこれから腹を切る男には見えないという雰囲気を出さなければなと思いました」
相澤「200年前の武士を演じるために特に準備されたことは?」
役所さん「作法とかそういうものは、『小笠原流』というものを監督が選んで、僕たちは前もって道場に行って習って・・・。乗馬も小笠原流のものを習いました。そうすることによって、少しずつ少しずつ、昔の日本人に近づいていったような気がします」
相澤「乗馬も小笠原流なんですね?」
役所さん「ええ。僕は全く習得できなかったんですけども、小笠原流ってのは流鏑馬をして、駆け足の時はほとんど立って乗ってるんですけど、それはもう難しかったですね」
相澤「所作も難しかったですか?」
役所さん「ええ。畳の上を数歩立ち上がらずに進むだけで、筋肉痛になりましたね」
相澤「立ち上がらずに進む?」
役所さん「膝行っていうんですかね。(※身分が高い人の前で急に立ち上がるのは失礼にあたるため、膝をつけたまま進むこと)ほとんど椅子の生活してますので・・・・これはもう本当に『日本人じゃないな』と思いました(笑)」
つづく
相澤 伸郎 @ 2014年9月20日 17:07