マッキーの家に帰っても飲み続けたが、疲労のあまり5人のうち3人は風呂にも入らず倒れこむようにして眠りについた。
・・・・・と思ったら「朝でーす!起きて下さーい!」というお父さんの朗らかな大声で起こされた。
まだ6時40分だったが、朝一番の飛行機に乗るので、もう起きなくてはいけなかったのだ。
昨日一日で5食も食べたうえに、夜は7時間呑み続けたのでまだ相当腹が張っていたが、マッキーのお母さんはしっかり朝食を用意して下さっていた。
これは食べないといけない。
さらに腹がパンパンになってしまった。
やがて山崎が起きてきて食卓に座った。
一口ごはんを口に運んだ山崎の表情に陰りが・・・・・。
山崎は「軟らかいごはん」が苦手なのだ。
この日のごはんはかなり水分が多めで軟らかく炊かれていた。
でも折角作って頂いたごはんを残すのは角が立つ。
そんな山崎の苦悩を機敏に感じ取った私はすかさず山崎から茶碗を奪い取りムシャムシャと食べた。
とても男らしかった。
普段の私なら見殺しにしていただろうが、何しろ今回の旅では全く車の運転をしておらず、かといって飛行機の予約や観光地の下調べなどもせず、何一つみんなの役に立っていないという後ろめたさがあり、その気持ちが私を奮いたたせたのだった。
名古屋へ向かう飛行機で隣に座ったのは岸本だった。
私は眠る気満々だったのに、どういうわけだか岸本はここに来てしゃべる気満々なのだった。
「相澤さんは、 さん、知ってます?」
「あんまり親しくはないけど・・・・」
「あの人がテレビ愛知に入る前、消防士だったって話があって・・・」
「へえーっ!そんな感じに見えないねえ」
「ですよね。気になって本人に確かめたんですよ。そしたらやっぱり消防士だったことはなくて・・・・子供の頃、消防士になりたかっただけらしいです」
なんで子供の頃の夢が他人の噂話の中で現実のものとなり社内に広まったのか?
謎は深まるばかりである。
そのほか「おいしいお米を取り寄せていて、その米がいかにおいしいかさんざん熱弁を振るっておきながら銘柄を尋ねたら全然思い出せなかった人の話」や「庭に出没するアライグマに『エサとかよりも自分の手を洗え!あんな不潔な手で万が一引っ掻かれでもしたら病気になっちゃうじゃないか!』と憤る人の話」など、岸本が会社の喫煙ルームで耳にしたという様々なエピソードを聞かされているうちに名古屋に着いてしまった。
岸本は席を立ちながらこう言い放った。
「もうーっ!相澤さんのせいで一睡も出来なかったー!」
お前がしゃべり倒したんじゃないか!
飛行機から降りると、まもなく正午という時間だった。
みんなはどこで昼ごはんを食べようかという相談を始めたが、私はちっとも腹が減っていなかった。
「とてもじゃないけど、昼飯は・・・・」と言うと、山崎の口から信じられない言葉が!
「朝からあんなに食べるから」
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